月別アーカイブ: 2013年10月

構造補強の桧丸太梁/兵庫県川西市古民家再生工事

兵庫県川西市で工事中のE様邸再生工事。

着工前の調査の段階で、リビングになるべき部屋の上部梁に、大きな鉄骨梁が沿わせてあることが判明しており、その鉄骨梁を抜くために新たな桧の化粧梁を入れました。

まずは材料の選定。

現場にて母屋・梁などの既存構造材のレベル(=高さ)を測定し、それらをきれいに受けるためにはどのくらいの曲がりが必要なのかをまず図面(矩計図=断面詳細図)で検討します。

残念ながら、今回の現場にピタッと合う曲がり・長さの桧丸太は東風在庫の中にはなかったため、いつもお世話になっている三田市の西元製材所さんへ相談。

するとまさに太さも曲がりもピッタリの、長さ7mの桧丸太が西本さんの倉庫の一番奥に眠っていました。
しかも伐採後1年くらい寝ていたようで、乾燥も申し分なし。
その日に製材して側面に面(ツラ)をつけてもらいました。goronbo2013_01

↑ 製材した時の様子。
こうやって見ると、結構曲がってますね。

さすがに6mも長さがあると、大人4人でも持ち上げるのがやっとの重さです。
(末口φ270、元口φ420でした)
当然レッカーなどは使えないので、トラックから降ろすのも現場内に搬入するのも人力のみ。
外で刻んだら室内に搬入するだけで傷まみれになってしまいそうだ、ということで、室内で刻むことになりました。

 

goronbo2013_02

↑ まずは丸太梁を八角形断面になるまで、電気鉋で荒削りします。

 

goronbo2013_03

現物を見ながら、丸太の仕口や高さなどを相談する大工さん。

goronbo2013_04

背の曲がりで2階床梁(胴差し)と交差する仕口部分では、並列する別フレームに地震力の伝達をしてくれるようにしたいという趣旨を説明したところ、デベソのようなホゾを作ってくれました。

goronbo2013_05

下屋の桁(けた)と丸太梁元口の仕口。
既存下屋の桁が細く、また屋根は触らないため、下から掬い上げて柱で突っ張る納まりにしました。

goronbo2013_06

↑ 梁を設置する際には、大屋根の登り梁にかけたチェーンブロックで吊り上げて施工しました。

 

goronbo_2013

完成したところ。

末口の端部は、太い柱にせずに2本の細い柱で挟み込んで間を透かした形にしました。
こういう納まりはあまり一般的なやり方ではありませんが、柱の断面欠損や他の梁とのからみなども考えて、今回はこの形にしました。

上に架かっている太い梁は松で太さが450mmくらいあります。
今回設置した桧の丸太梁は、吹抜けのあるLDKのど真ん中を渡っている格好になる象徴的な梁ですが、手が届くような低い位置にあるので、節も少ない木を選び、八角に削ることで端正な表情に仕上げました。

古民家/石場建て伝統構法 を 高気密・高断熱で暮らしやすく
(株)木造建築 東風のサイトはこちら↓

名栗加工2013/川西市で古民家再生・耐震改修工事

兵庫県川西市内で、9月下旬から築150年の古民家再生工事に着手しています。

着工してからというもの、現場の段取りや材料の手配などでバタバタしておりましたが、少し落ち着いてきましたのでブログを書き始めることにしました。

 

今週の月曜日(10/14・祝日)に、クライアントのE様と一緒に京都市右京区の京北町へ行き、原田銘木の原田さんにE様邸で使う玄関式台の名栗加工をお願いしてきましたのでご紹介します。
(以下、全ての画像は拡大表示できます)

naguri2013-01

上の写真は、今回名栗加工を施す前の杉板。

長さは約2m、厚みは40mmです。
和歌山県産の杉板です。
1番玉という、木の中でも一番根元の節が出にくい場所から採った材料です。
樹齢は約100年の木。

 

naguri2013-02

まず名栗加工を施す前に墨付け(すみつけ)を行います。

今回は片側に杉皮を残した板として仕上げるので、手前と奥とで板の巾が異なります。
そのため、ハツリ目の巾を微妙に変えながら仕上げていかねばなりません。

墨付けをしてくださっているのは、化粧名栗加工の職人・原田隆晴さん。
東風の化粧名栗加工は、いつもこの原田さんが手がけてくださっています。

 

naguri2013-03

上の写真はちょうなで名栗加工を施している原田さん。

動画を2件アップしたので観て頂くとわかるのですが、結構早いスピードではつっていきます。

→ 古民家再生の玄関式台に使う化粧名栗板の加工 2013その1
→ 古民家再生の玄関式台に使う化粧名栗板の加工 2013その2

 

naguri2013-05

↑ 名栗加工が完了しました。

原田さんが使われた蛤刃のちょうなを一緒に撮らせて頂きました。
何度見ても惚れ惚れする美しい仕上がりです。

 

naguri_bofore_after

今回加工していただいた板の加工前・加工後の写真を並べてみました。

木目の見え方がかなり違うことがよくわかっていただけると思います。

 

東風ではよく玄関の上がり口の板(式台)にチョウナで化粧名栗(なぐり)加工を施した杉板を使います。

理由は様々あるのですが、主なものを挙げると
1. 原木を定期的に購入しているので、美しい杉の幅広・厚板が入手しやすい
2. 杉板は柔らかく傷つきやすいので、そのままカンナで仕上げると使っているうちに傷ついて見苦しくなってしまうが、名栗加工しておくと傷も目立ちにくく、味わいも深いので気兼ねなく使うことができる
3. 玄関先にこのような独特の表情の板があると、来客時にもツカミの話題として使うことができる
4. 何よりも美しく、足触りが気持ちいい♪
というところです。

東風ではいつも原田さんにご協力を得て、クライアントのみなさまの目の前で名栗加工をして頂いていますが、クライアントのみなさまも毎回大変喜ばれ、いい記念になるし、来客時にもご自身の言葉で説明でき、愛着もひとしおです。

古民家/石場建て伝統構法 を 高気密・高断熱で暮らしやすく
(株)木造建築 東風のサイトはこちら↓