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木造建築と石場建て伝統構法の建築家【東風】(大阪、京都、兵庫、東京)

祖父母が住んでいた築40年の家をリフォーム+増築/兵庫県神戸市HEADLINE

概要・コンセプト

i 様は娘さんお二人とご夫婦の4人家族ですが、ご主人のご実家の隣に建っていた祖父母のお住まいだった建物をリフォームしてお住まいになる計画を立てられていました。
私共にご連絡いただいて、リフォーム前の現場を見せて頂いた時、i 様からおばあさまが茶道をされていたというお話を伺って、玄関や座敷まわりの瀟洒な造作に「なるほどなぁ〜」と合点がいきました。
全体に骨組みは割りと細いものだったので、玄関と座敷・広縁の部分のみを平屋として残しながら、他の部分を増築し、全体としては一つの建物になるような計画を立ててご提案しました。

また既存建物の床板に桧の無垢材が使われていたことから、新たに増築する建物の床板にも桧を使いましょうと話し合いをしていた時に、
「もし良かったら桧の原木を伐採して、その木から床板を採って使うこともできますがやってみますか?」
とご提案したところ、奥様がものすごく興味を示されてその場で話が決まり、和歌山県田辺市まで出かけて目の前で林業家に伐採してもらった木を使いました。

木を出して下さった林業家の福本様も、御施主様の i 様とお話されてお互いの人柄を感じ、自分の出す木がこのご家族の家に使ってもらえるということを大変喜んで下さいました。
もちろん、同じように i 様ご家族も伐採・製材に立ち会った木が家の随所に使われたことを喜んで下さり、結局床板だけでなく、リビングの梁4本と大黒柱にもその時の桧が使われました。


建物の写真

桧の原木伐採に立会い、林業家の説明を聞くi様ご夫妻

和歌山県田辺市の山中で桧の伐採に立ち会われた i 様ご夫妻(右)と、木について説明する林業家の福本様。この時伐採したのは樹齢90年の桧で、北向き斜面に生えていた木なので年輪がとても緻密な木でした。

兵庫県神戸市i様邸改修工事 外観

i 様宅全景。外壁は耐久性に優れたガルバリウム鋼板製のサイディングを2色使い、上下階で張り分けています

兵庫県神戸市i様邸増改築/当初の雰囲気を残した玄関 兵庫県神戸市i様邸増改築/玄関の照明器具

左写真:既存建物をそのまま残した玄関部分。奥に見えている白壁の範囲からは今回増築した部分
右写真:玄関の照明器具は、i 様が探してこられた京都の照明器具店のオリジナル。
      表情のあるガラスの質感と繊細なフレームの細工が印象的です

兵庫県神戸市i様邸増改築/当初の雰囲気を残した座敷

既存の和室は、建具・柱などをそのままの形で残して使っています。
現在仏壇が納められている部分はもともと押入でしたが、その部分だけ今回改修しています。

兵庫県神戸市i様邸増改築/伐採に立ち会った桧を梁・床板・大黒柱に使ったリビング 兵庫県神戸市i様邸増改築/愛用の山桜のダイニングテーブル

左写真:増築したリビング内観。このリビングは上述した和室と続き間になるように配置しています。天井に見えている2本の丸太梁や、その下に配置されている角材の太い梁は、i 様も伐採に立ち会われた桧から採ったもの。
右写真:リビングで使われている座卓は、i 様が以前から使われていたもの。山桜の1枚板を家具に仕立てたもので、この座卓の大きさに合わせて掘りごたつのように床板を切って足が入れられるようにしています。

兵庫県神戸市i様邸増改築/リビング内壁はご自身で塗られました

リビング壁面と間接照明。全ての壁面は i 様ご夫妻が約2ヶ月かけて週末を使って塗ったもの。
ほたて漆喰という素材を使っています。

兵庫県神戸市i様邸増改築/ダイニングのペンダント型照明器具 兵庫県神戸市i様邸増改築/おじいさまから譲り受けたクラシックなオークの机
左写真:リビング座卓の上に吊り下げたのは、玄関の照明と同じ作り手によるものです。
右写真:リビングの隅にはクラシカルな机と椅子が据えてありますが、これは i 様のおじい様があつらえられたもの。
     素材はオークで、今はひ孫である i 様の娘さん(小学生)が勉強机として使われています。
     世代を超えて受け継がれる家具っていいですね。

兵庫県神戸市i様邸増改築/庭の様子  兵庫県神戸市i様邸増改築/長さ6m×巾8寸の桧の床板

左写真:リビングの前庭。日除けのために i 様が植えられたきゅうりと山芋の他、竣工後に植えた樹木が点在して柔らかな雰囲気になっています。
右写真:リビングの床板も伐採した桧から採っています。この床板は長さ6m×巾8寸(240mm)という大きなもので、節の少ない部分(1番玉)から木取りしているため、大変美しいものができました。
下の写真は床板施工中の写真ですが、板の長さや幅広の様子がお分かりになると思います。
床板の裏面には反り止めの目的で筋状の鋸目(のこめ)を入れた後で、蟻桟(ありざん)という反り止めの木を設置してから張っています。
兵庫県神戸市i様邸増改築/桧床板の反り止め加工をしている様子


兵庫県神戸市i様邸増改築/キッチンの壁に埋込んで描かれたおはじきの富士山と三日月

キッチンからリビングをみたところ。キッチンの垂れ壁には、 i 様が埋め込まれた色おはじきで富士山と三日月が描かれていますが、これも i 様の発案・デザインによるものです

兵庫県神戸市i様邸増改築/造り付けの食器棚 兵庫県神戸市i様邸増改築/杉厚板に特殊な滑り止め加工を施した階段

左写真:キッチンの脇の壁面に設けた浅い食器棚。片引戸が設けてあり、撮影時は開けた状態で撮りました。
右写真:杉の無垢材でつくった階段。足をかける踏み面(ふみづら)には、特殊な滑り止め加工を施してあります。