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木造建築と石場建て伝統構法の建築家【東風】(大阪、京都、兵庫、東京)

1. 民家再生や改修工事で最も重要なのは、建物との対話

新築工事と違って既存建物を改修する工事の場合、当然のことながら、まずは建物の状況調査から取り掛かります。
こんな風にしたい、あんな風にしたいと、いろんな間取りやイメージを膨らませる前に、建物が発している声を聴くのです。

建物の声はいろんなところに潜んでいます。
例えば

・ 柱や梁の樹種、大きさなど材料に関すること
・ 柱の沈下、周辺の樹木や地形など地盤のこと
・ 1階と2階の間取りと柱・梁の配置状況や組み方
  梁の垂れ下がり方から読み取る荷重の状況など

一つ一つ丹念に調べていくと、その建物を一番最初につくった棟梁の考えや、施主である依頼主の想いなどがだんだん浮かび上がってきます。

「何とかしてくれ〜」
と悲鳴を上げている建物もあれば、
「いらっしゃい、待っていたよ」
と穏やかに迎えてくれる建物もあります。
「お前なんかに俺のことが判るのか?」
と挑戦してくるような猛者もいます。

いずれにしてもまずは建物の声を聴き、これから住まわれようとされているあなたのご要望を伺って、何度も図面を描き直しながら、建物の特性と住まい手を無理のない形ですり合わせる作業を行うこと。
これが私たち作り手の役目です。

→ 古民家の再生・改修工事の手順と調査項目

 2世帯住宅として再生された、築80年の古民家。兵庫県丹波市

小屋裏の写真
天井裏や床下に入って調べると、建物を作った大工さんの想いがよくわかります


2. 民家再生やリフォームの構造補強についての考え方

構造補強の考え方は、既存建物の性格によって2つのアプローチのいずれかを選択します。

1つ目は、改修しようとしている建物が土塗り壁が塗りつけられているような、石場建て伝統構法である場合。
この場合には建物が揺らされた時に変形できるように、ということを意識して、土壁や貫(ぬき)・足固めなどの柔らかく粘り強い耐震要素で構造補強を行います。

2つ目は、改修しようとしている建物が築40年未満の在来工法である場合。
この場合は上記の伝統構法タイプとは逆で、合板を張ったり筋交いを設置したりして、固くて変形しにくいような耐震要素を設置することで構造補強を行います。

→ 在来工法と伝統構法の違いについて


そしてどちらの場合であっても共通して必要なのは、上からかかってくる荷重の流れを把握し、構造材に無理をさせないような力の受け方をしてあげること。

開放感を求めるあまりに柱を抜きすぎて、一部の柱に過大な力がかかってバランスが崩れているところや、梁が上部の荷重に耐え切れずたわみが出ているところには、新たな柱を添えてあげるようにしなければいけません。

→ 民家再生工事の構造補強について

 床下に足固めを入れることで構造補強を行う
↑桧の足固めを入れて補強している状況

竹小舞は重要な耐力要素
↑竹小舞+土壁は重要な耐力要素


3. 新旧がお互いを引き立てあう空間にするデザイン

民家再生工事やりフォーム工事の際に私たちが心がけているのは、既存建物の構造体の特徴を読み取り、その持ち味が生きるように手を加えてあげるということです。

寄り添いながら支えてあげる、伴走者のような位置づけと言っても良いかもしれません。

古い家の場合、すでにリフォームを2度・3度と重ねていることも多いのですが、そうやってリフォームを重ねていくと、当初狙っていた建物の持ち味が殺されてしまっているような事例を見かけることも少なくありません。

古いものを覆い隠し、新しい物を足すことで良くなるケースも確かにありますが、建物が元から持っている力が生きるように全体を整理しなおして、これから営まれる住み手の生活に合うような空間にしつらえてあげる。
そうすれば建物がいきいきと輝きを取り戻し、新しいものと古いものとがお互いを引き立てあうようになります。

そうやって建物のもっている価値を高めてあげるのが私たちの役目です。

淡路の再生古民家階段写真

丹波市の再生古民家内観写真

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