築後約150年を経ているという e 様のお宅。
築150年といえば、江戸幕府が倒れて明治維新が興った激動の時代です。
川西市街地の中心付近にありながら、とても静かな住環境に建っている e 様のお宅は、近畿地方によく見られる田の字型と言われる典型的な農家住宅の間取り形式の建物。
今回の再生工事を行う以前は、昭和期のリフォームによく見られるように、小さないくつもの個室に区切られた間取りになっていました。
再生工事を行うにあたって、着工前に e 様ご夫妻と何度も設計の打合せを行う中で、主な設計方針としては以下のような考え方に基づいて空間を再構築することになりました。
○ 昭和のリフォームの際に設置された天井を取り払い、各部屋の間仕切り壁も取り去って、
もともとの民家が持っている梁組みを活かした大きな吹抜け空間にする
○ 暖房器具には、以前から奥様が希望されていた大型の薪ストーブを設置する
○ 古民家再生によくあるように、すべての木材を濃く色付けしてしまうのではなく、新材と古材の
対比が緊張感と新しさを生むようなデザインにする
伝統構法の構造特性に合わせた耐震補強工事を行いました。
住宅ローン減税対象物件です。
このページの写真は、LIGHTS PHOTOの森祥子さんが撮影されたものです。
玄関内観写真。
天井には黒光りする重厚な太い丸太梁を見せながら、軽快な雰囲気を出すために柱には数寄屋で用いられる、華奢な杉の面皮柱をとりあわせ、全体に白木の風合いで仕上げました。
ゆらぎのあるようなグリーンの陰影は、奥様と東風とで相談しながら選んだ個性的な照明器具によるものです。
玄関の上り口には、ちょうなによる化粧名栗(なぐり)加工を施した杉の式台を設置しました。
凹凸のある表面は、足触りがとても気持ちよく、来訪されたお客様との話の糸口に一役買っているようです。
玄関上り口の垂れ壁留めには北山杉の磨き丸太をとりあわせ、アクセントに刃物でえぐった加工を施しました。
玄関ホールに設けたクローゼットと間接照明。
軽快なデザインにするために、建具は縁なしの坊主襖仕立てとし、淡いグリーンの紙を選びました。
左写真:玄関ホールに新設した緑色のガラスの照明器具。表面に大きな凹凸があるガラスなので、光線が屈折して海の中のような光が出ています。
右写真:玄関ホールからリビングを見通したところ。上部は吹抜けの空間となっており、玄関からリビングはゆるやかにつながる開放的な一室空間になっています。
リビング内の階段と吹抜けの状況